1983年に発表された『海辺の一日』は、エドワード・ヤンの初の劇場用長編映画であり、同時に撮影監督クリストファー・ドイルの長編デビュー作としても知られる記念碑的作品である。このデビュー作でヤンは、のちの『恐怖分子』『牯嶺街少年殺人事件』『ヤンヤン 夏の想い出』へと連なる主題――都市の変貌、世代間の断絶、家族の軋み、そして個人の記憶が現在をどう規定するか――を、すでに鮮やかに提示した。
本作が特異なのは、ひとりの女性の意識と記憶の流れに沿って、過去が波のように立ち返ってくる点にある。現在と過去、複数の視点、そして語られなかった感情を精密に編み込みながら、ヤンは一人の女性の人生を通して、急速に近代化していく台湾社会のひずみを浮かび上がらせる。台湾ニューシネマの胎動を告げたこのデビュー作には、後年のヤン映画を決定づける時間感覚と感情の強度が、すでに刻まれている。
【STORY】
佳莉(ジャーリィ/シルヴィア・チャン)は、伝統的な価値観のもとで育ち、父の支配に従えず恋人・徳偉(ドゥウェイ/デヴィッド・マオ)との結婚を選んで家を出る。
だが、その結婚生活は次第に理想とかけ離れたものとなっていく。
兄・佳森(ジャーセン/ミンシ・アン・ツォー)の元恋人である蔚青(ウェイチン/フー・インモン)は、オーストリアから帰国した才能あるピアニストとして活躍していた。
ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。
そこで彼女は、夫との歳月と、自分が選んできた人生をあらためて見つめ直していく。
「作品情報」
エドワード・ヤン
シルヴィア・チャン、フー・インモン、マオ・シュエウェイ
公式サイト