旅の終わりのたからもの(112分)

旅の終わりのたからもの

ホロコーストを生き抜き人生を謳歌する父と NYで成功するもどこか満たされない娘

家族の記憶に触れて、初めて知る互いの心の深い傷 
ポーランドで繰り広げられる、ちぐはぐで痛くて、忘れられない旅 

 民主国家としての土台を築いていた激動の時代である1991年のポーランドを舞台に、NYで生まれ育った娘と、約50年ぶりに祖国に戻った父が繰り広げる異色のロードムービーが完成した。家族の歴史を辿ろうと躍起になる神経質な娘と、娘が綿密に練った計画をぶち壊していく奔放な父。かみ合わないままの二人がアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れた時、家族の痛ましい記憶が初めて語られる――  全編を貫くユーモアと前向きなテーマ。全くかみ合わない父と娘が、相手の言動に容赦ない辛口のツッコミを連打し笑いを誘う珍道中かと思いきや、それぞれの心の傷にも鮮やかに光が当てられ、封印してきた過去と向き合うことで、未来へと新たな一歩を踏み出す姿が描かれる。さらに深い共感を呼んだのは、ホロコーストへの今日の問題としてのアプローチ。生存者の娘を主人公に据えて、戦争未体験の世代にも落とす影にフォーカスすることで、今を生きる私たちの物語として胸に迫る作品に仕上げることに成功した。  
父は娘を悲しみに巻き込むことが怖かった。娘は父の苦しみを白日のもとにさらす勇気がなかった。そんな思いやりが、真の愛を遠ざけることがある。ちぐはぐで痛くて、笑いながら泣きたくなる旅のおわりに、二人が見つけた“たからもの”とは──?

「作品情報」

ユリア・フォン・ハインツ

レナ・ダナム、スティーヴン・フライ

公式サイト