私の見た世界(69分)

私の見た世界

「女」は、何から逃げたのか——


 昭和と平成を震撼させた逃走劇が、令和の時代に新たに問いを投げかける。 福田和子の人生を通じて浮かび上がる社会の闇と光、人間の弱さと強さ。

福田和子——その名前は、昭和と平成をまたいで日本中を騒がせた事件とともに記憶されている。1982年(昭和57年)松山ホステス殺人事件の犯人として指名手配された福田は、顔や名前を変えるなどして警察の目を欺き、時効直前の約15年間にわたり逃走を続けた。妻であり母親でもあった彼女の逃走劇とその背景は、当時の日本社会に大きな衝撃を与え、犯罪の恐ろしさだけでなく、人間の弱さや孤独、そして社会の闇を映し出す鏡としても多くのメディアや書籍で紹介されている。想像を超える痛みや孤独、そして恐れに満ちていたようにも思える福田和子の人生。その中で何が彼女を追い詰め、どのようにして彼女自身がその道を選んだのか——。

本作はしかし、過去の出来事を単なる犯罪史として再現する映画ではない。監督は女優としても知られる石田えり。芸能界で華々しいキャリアを持つ石田が、SNSやデジタル技術が普及した令和の時代に、あえて福田和子の物語を描くことは、人間の本質や社会の矛盾を改めて問い直すきっかけとなるだろう。彼女の逃走生活を描くことで、「罪を犯した者」が社会との接点をどのように持ち続けたのか、その中で何を感じていたのかについても新たな視点が得られるはずだ。これは福田和子の物語に重ねて、社会の光と人間の強さにもわずかな希望を見出している石田えりの物語でもある。

「作品情報」

石田えり

石田えり、大島蓉子、佐野史郎

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